No.0016

手術が下手で「ジャマナカ」と呼ばれた医者が、
ノーベル賞をとった話

山中伸弥さん

今日は山中伸弥さんの話をさせてください。iPS細胞でノーベル賞をとった、あの山中教授です。

……が、今日する話は、輝かしいほうじゃありません。あだ名の話です。

山中さん、もともとは整形外科の研修医でした。ところが手術が苦手で、うまい先生なら20分で終わる手術に、2時間かかった。先輩からつけられたあだ名が「ジャマナカ」。本人いわく、「お前はほんま邪魔や」と😅

ここで山中さんは、道を変えます。手術で治せないなら、いま治せないケガや病気そのものを、いつか治せるようにしたい。臨床医から、研究者へ。20代後半の転身でした。

アメリカのグラッドストーン研究所に留学して、所長からひとつの教えをもらいます。

「目的を、ビジョンをはっきり持って、そのために一生懸命働く。どっちが欠けてもだめですよ」

VW——Vision & Work hard。山中さんがいまも語り続けている言葉です。

ところが帰国後、どん底が来ます。研究環境の落差で、本人いわく「英語なし、セミナーなし、お金なし、ディスカッションなし、ネズミの世話もできない」。本人が「PAD」(Post America Depression=アメリカ後のへこみ、という自作の言葉)と呼ぶ状態になって、研究者を辞める一歩手前まで行きました。

救ったのは、公募です。1999年12月、奈良先端科学技術大学院大学の助教授に採用されて再起。そこから2006年、iPS細胞の発表。そして2012年、ノーベル生理学・医学賞です🔥

山中さんが講演でよく掲げる言葉があります。

「人間万事塞翁が馬」

いいことも悪いことも、その時点では分からない。手術が下手だったから、研究の道へ行った。「ジャマナカ」がなければ、iPS細胞はなかったかもしれないんです。

いま、あなたが「向いてないかもなあ」と思っていること。……それ、ダメの合図じゃなくて、進路変更の合図かもしれませんよ。隣の道、ちょっとだけ覗いてみませんか?