今日は田部井淳子さんの話をさせてください。1975年、女性として世界で初めてエベレストに登った登山家です。
始まりは、小学4年生の遠足なんです。
福島の三春町で育った田部井さん、10歳のとき、担任の先生に連れられて那須の茶臼岳に登ります。そのときの気持ちを、こう語っています。
「『山に登るってこんなに素晴らしいことなのか』。それを強い衝撃として感じたのがこの茶臼岳登山でした」
先生が連れて行ってくれた、一度の遠足。ここに火種が置かれました。
大人になってからは、雑誌編集の仕事をしながら山を続けます。プロの登山家としてではなく、働きながら、です。そして1969年、「女子だけで海外遠征を」を合言葉に、日本初の女性だけの山岳会を立ち上げました。女性の登山隊なんて前例がほとんどない時代に、ですよ。
1975年、日本女子エベレスト登山隊の登攀隊長として挑みます。準備に約4年。
で、この遠征、順調どころじゃなかったんです。登頂の12日前、標高6300mのキャンプが雪崩に襲われます。田部井さんはテントごと雪に埋まり、シェルパに救出されました。ケガをして、それでも下山しませんでした。
1975年5月16日。エベレスト登頂。女性として、世界で初めてです🔥
でね、僕がいちばんしびれたのは、記録よりもこの言葉なんです。
「私は、“挑戦”や“征服”という言葉は好きじゃないのです。それよりも、心から湧き上がる好奇心で、山を登り続けています」
世界初の人が、「挑戦」という言葉が好きじゃない。原動力は根性じゃなくて、好奇心。10歳の遠足で「知らない景色があるんだ」と感じたあの気持ちのまま、エベレストまで行っちゃったんです。
「いい経験こそ人生の貯金」という言葉も残されています。晩年はがんと闘いながら山を続け、震災後の東北の高校生と富士山に登るプロジェクトを立ち上げました。それは、いまも引き継がれています。
好奇心って、根性より長持ちするんですよね。あなたが子どもの頃、時間を忘れてやっていたこと。……あれ、もう一回だけ、やってみませんか?