今日は坂本龍馬さんの話をさせてください。……と言っても、ドラマや小説の龍馬ではありません。今日は、実物が残っているものだけで話します。
京都国立博物館に、一通の手紙が保管されています。国の重要文化財です。書いたのは坂本龍馬さん、28歳。宛先は、土佐にいるお姉さんの乙女さん。1863年、幕末のど真ん中です。
その手紙に、こう書いてあります。
「日本を今一度せんたくいたし申候」
日本をもう一度、洗濯する。
このときの龍馬さん、何者でもないんですよ。前の年に藩を脱藩した、いわば無職の浪人です。組織も、肩書きも、お金もない。それが、姉への手紙に「日本を洗濯する」と書いた。
でね、この手紙のいちばんすごいところは、カッコつけた公式文書じゃないところなんです。姉と弟のあいだの、身内の手紙です。誰かに見せるためのものじゃない。つまり、盛る必要のない場所に書かれた本音なんですよ。
龍馬さんには、有名な逸話がたくさんあります。ただ実は、その多くが後世の小説の創作だったり、確かな記録が残っていなかったりします。なのでこの辞典では、そういう話は書きません。
でも、この手紙は違う。紙の実物が、160年以上たったいまも京都にあるんです。28歳の浪人が本気でそう思っていたことだけは、物理的に証明されている。すごくないですか🔥
龍馬さんが自分で詠んだ歌も、自筆の史料が残っています。
「世の人はわれをなにともゆはゞいへ わがなすことはわれのみぞしる」
世間が何と言おうと、自分のやることは自分だけが知っている——。
肩書きがなくても、実績がなくても、火はつく。それを証明する紙が、博物館に残っている。
あなたがいま本気で思っていること、文字にしたことはありますか。……信頼できる誰かに、一度だけ書いて送ってみませんか?